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 多くの人にとって、「教師 (teacher)」「インストラクター (instructor)」「教育者 (educator)」は同義のことばでしょう。教育者ということばは教室で教える人を指すには、やや大げさでかしこまったことばです。ほとんどの辞書ではこれらのことばは同義として扱われています。自分でも辞書を引いてみると、教育者とは指導や教育をする人・教師とありました。「教育者とは教育をする人」 ということばの反復について取り上げるのはここでは置いておいて、この意味をもう少しよく考えてみたいと思います。

 道で誰か(つまり、専門家ではない人)に教えるとはどういうことかと聞くと、おそらく、「何かのやり方を説明したり、見せたりすることや、相手が持っていない情報を伝達すること、読み書きや車の運転など、なんらかのスキルを教えること」(私は長年教師ではない人たち(教えることを職業にしていない人)に教えるという意味は何かと聞いてきたので、これがよくある反応だと知っているのです)という答えが返ってくるでしょう。

 教える (teaching)ということについては、「伝達」(transmission)という見方がよく知られています。なぜならあることを知っている人が、知らない人にその情報を伝達するからです。学校には数学や科学など、特定の分野の専門家がいます。その分野の知識を持っていない人に、情報を伝達することでお金をもらっている人たちです。彼らは教師(teacher)やインストラクター(instructor)として知られています。

 私は、この考え方は図工や美術に限った見方だと思います。この「伝達」という見方は欠如しているということに縛られた考え方です。子どもの心は情報が注がれるのを待っている空の器のようなものではありません。実際に研究の結果、講義というのは学習をもたらすのに最も非効果的な方法のひとつであることがわかっています。

 もっと広い見方をする教育者はいつの時代もこのことをよくわかっていました。2000年前、初期の優れた教育者のひとりであろう哲学者のソクラテスは、「教育とは人という器をいっぱいに満たすようなものではなく、炎に火を付けるようなものだ」と言いました。英語の教育 (education)ということばは「引き出す」を意味する、ラテン語のeducareから派生したことばです。つまり、学習者がすでに知っていることを使い、方向付け、磨きをかけ、発展させ、すでに知っていることと、これから学ばなければいけないことの間に架け橋をつくるのです。

 その結果として、学習のプロセスは、伝達モデルが意味するものよりも深く、豊かなものになり、教育者は自分たちが子どものあらゆる側面の発達に責任があると考えるようになります。教育者は自分が教える子どもの認知や知能の発達だけでなく、感情面、社会面、美的感覚、道徳面にも影響を与えるのです。このことは素晴らしい役割であると同時に、大きなチャレンジでもあります。

 教育者とは、自分たちの主な責任が、子どもたちに知識を注ぎ込むことではなく、学ぶ機会をつくることにあると考える人のことです。 

 

【デビッド・ヌーナン教授】Dr. David Nunan

TESOL (Teaching English to Speakers of Other Languages; 英語教授法)の世界的権威であり、アナハイム大学のデビッド・ヌーナンTESOLインスティチュートのオンラインTESOL認定およびTEYL(Teaching English to Young Learners)認定プログラムを開発・監修を務める。多くの著書が世界中で教科書として使用され、「Go For It!」シリーズは全世界で累計2.5億部の売上部数を記録。2000年にはTESOL協会(言語教育分野の世界最大の学会)の会長を務めた。本学ではTESOL修士課程にて教えるほか、これまで香港大学やコロンビア大学(アメリカ)、上智大学、チュラロンコン大学(タイ)、マッコーリー大学(オーストラリア)などの一中大学での指導経験を持ち、徹底した学習者中心の教育を掲げ、1996年のアナハイム大学設立時より、本学とともにオンライン教育を牽引している。

 

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